
こんな方におすすめの記事!
本ブログで何度も紹介している学習方法であるプロジェクトベース型学習(PBL)を取り入れている教育団体を紹介します。
今回は「ROCKET異能発掘プロジェクト」という文部科学省公認の次世代教育プロジェクトについてです。
PBLを取り入れる異能発掘プロジェクトROCKETとは

ROCKETという名称は
Room Of Children with Kokorozashi and Extra-ordinary Talents
の略です。
現代は不登校が年々増加傾向にあります。
そしてそれは現代の学校教育では対応でき無い子どもたちが増えていることを意味します。
ROCKETは、学校教育には合わないため学校へ行かない不登校児の中でも、「何かを探求し続ける事に特化した子ども」の特性を伸ばす場所となることを模索している団体です。
ただ何がすごいって団体を支えるサポーターが東京大学と日本財団であり、2014年から共同で運営しています!
日本最高学府である東京大学の東京大学先端科学技術研究センターの教授陣が監修という本格的なプロジェクトになります!
しかもROCKETは文部科学省主導のプロジェクトです。
公教育を主導する文部科学省が、不登校児童の対応や異才を持つ子どもたちへの教育にも乗り出した公の証拠になります。
自分の興味に貪欲すぎて協調性がないなど、学校での集団学習になじめないが異才を持つ子どもたち
志ある特異な才能を持つ子どもたち
だそうです。
こういった子どもたちに学校教育以外の学習機会を提供しようというのがROCKETという団体です。

ところでROCKETが言う異才・異能ってどんなものなの?
ここで言う異能・異才とは能力の高さではなく、異なる行動や視点から既存の常識とはかけ離れた新しい価値を生み出す素質のことを指します。
ROCKETは自分たちの目指していることは、ギフテッドと呼ばれる優れた部分に特化する早修型教育とは異なると明言しています。
つまり、ただ何かの分野において早熟である、優れた才能があることに着目しているわけではなく、今の学校で不登校になっている子たちが自分らしく生きられる子を増やすことも目的としています。
ROCKETはプロジェクトベースドラーニングを取り入れている

ROCKETではプロジェクトベースドラーニング(PBL)を学習方法として取り入れています。
プロジェクトベースドラーニングとは英語、理科など科目別に学習するのではなく、1つのプロジェクトを進めるにあたって全教科を横断的に学んでいく学習スタイルです。
たとえばPBLを取り入れているN高等学校ではなんと企業や都庁とタイアップして高校生が社会課題を取り扱う中で学習を深めていきます。
N高等学校も次世代に適した教育を行おうとしてプロジェクトベースドラーニングを取り入れています。
ROCKETではPBLの他にも
など文部科学省公認の教育プロジェクトでありながら、文部科学省が認定した学校教育とは全く異なる学習機会を提供しています。

N高等学校でも各分野でのトップランナーによる講義を行っていますし、プログラミングやデザインにおいて第一線で活躍している社員がサポートしてくれるシステムを作っています。
現代の高等学校においても科目別に専門の教員が教えます。
N高等学校やROCKETでは学校教育ではおそわらないプログラミングやデザイン、社会的課題の解決などを社会人や専門家から学ぶことができる環境を取り揃えているというわけですね。
現代教育の課題解決へ取り組むROCKETに込められた想い

ROCKETは目標を掲げています。
既存の学校教育では「不登校の問題児」とみなされてしまう子どもたちが、予測不可能な新しい時代の波を自由に乗りこなし、世の中に変化を起こす側に立つこと。日本の画一的な教育を変える原動力となる。
https://ascii.jp/elem/000/001/935/1935562/
という事です。
ここでは2つのポイントを紹介します。
現代の学校教育が抱える大きな課題
現在の教育は主にデコボコ(凸凹)のボコ(凹)を平らにすること、つまり弱点をなくすことに着目しすぎていますが、ROCKET設立者も現代の学校教育も必要な教育であると考えています。
しかし画一的にその教育をほどこすのではなく、デコボコのデコ(凸)という突出した部分を伸ばす教育があってもいいと考えたことが発足のきかっけでした。
また「そもそも30~40人の子どもを先生1人で見ているので、個人に合わせて突出部分を伸ばすような教育はそのシステム上は無理があるのかもしれない」と考えています。
これまでの公教育はいい意味で平準化してみんなで学ぶという事をしてきました。
しかし現代はそれに適用できない子どもが増えつつあるのもまた実情です。
事実、現実問題として現在不登校の子どもは全国に約16万人もいます。
文部科学省調べによる小中学校における不登校児の人数推移を示します。

https://www.mext.go.jp/content/20191217_mxt_syoto02-000003300_8.pdf
なんと2012年から小学校、中学校両方において不登校児童は毎年増改傾向にあります。
2018年度時点で小中学校における不登校児の人数は164,528人(歴代最多)。
前年度は144,031人であったことから2018年度は1年で2万人も増加しています。
また学年別で見ると高学年になるほど不登校児童生徒数は増加していき、小学校から中学校へあがることを境にその人数が約3倍になります。

つまり中学校における不登校児童の人数が12万人もの数となっているのです。
さらには「実際に学校教育になじめていない子の人数」はこの数字にとどまらないと言われています。
学校には行っているが授業を聞いていなかったり居場所が無かったりする子どもや仮面登校の子も少なからず実在します。
よって16万人の不登校児童数以上に、実際には現代の学校教育に適用できていない子どもがいると考えられます。
少子高齢化と言われ子どもの数は年々減少傾向にあるにもかかわらず、不登校児童生徒数は年々増加しています。
これは全体の児童に対する不登校児童の割合も増加している可能性を示唆します。
こういった現実のデータを見ても、公教育だけではすべての子に適した教育を提供できていないことを意味すると言えます。
近年では特に学校教育になじめない子たちが増加しつつあり、学校教育の画一的なシステム上その子たちをフォローする事ができていないのです。

ただROCKET設立者も誤解せずにいて欲しいと伝えているのは、彼らは「公教育を否定しているわけではない」ということです。
最終的には家庭と学校に対する第三の場として存在したいと考えているようです。
半数以上の多くの生徒は公教育でフォローしつつ、公教育ではフォローできないような子をROCKETはサポートしていく形を考えているようですね。
ROCKETが強く願うことは、子どもを型にはめたくないという事
ROCKETに関わる大人たちは、子どもを型にはめないことに注意しています。
特別な才能を伸ばすギフテッド教育では、特定の領域に対して大人が既に持っている理論や学びを集中的に提供する事で格段に高い学習速度を可能にしています(早修型学習)。
しかしROCKETは上述するようにギフテッド教育とは異なる方向性を目指しています。
子どもたちが大人の型にはまった学習をするのではなく、まったく新しくてイノベーティブな事をするために自分たちで学びの方向すら見つけて欲しいと考えています。
現代の大人たちが使っているすでにあるようなものを伝えるのではなく。
いろいろなことから全く新しいものを自分で結びつける力をつけて欲しい。
ROCKET関係者は、子どもを型にはめないことを願っています。
ROCKETプロジェクトで発掘された異才・異能

本プロジェクトによって実際にどのような子が着目されているのでしょうか。
その異才を花開かせた方の記事が掲載されていました。
ロケットの選抜生徒(スカラー)であり、ロボットの研究開発に没頭するために高校には進学していません。
ただ自宅でロボットを制作する日々を送っています。
最近では企業からの技術提携や特別な勤務形態での仕事の話などが入り、最先端のロボット科学分野で第一人者にも認められ活躍されています。
鳥山樹くんは、職人のようにロボットを作ります。
彼が考えるロボットの動きや造形は彼にしかない発想だと、ロボット研究の第一人者でもある高橋智隆先生も高く評価しています。
https://diamond.jp/articles/-/203309?page=5&display=b
鳥山さんは高校には通われていませんが、ROCKETで異才ありと認定され、ROCKETの全面バックアップのもと自分のやりたい事へ没頭しています。
絵を描くことに秀でた濱口瑛士さん
しゃべったり文字を書くのが苦手で、中学3年生で不登校となりました。
しかしその絵を描く才能はずば抜けていました。
2017年に当時15歳でプロの画家となられたそうです。
実際画集も出版されています。
いずれも不登校であり、いわゆる高等学校へは進んでいません。
ROCKETが無ければ彼らは「学校へいかない不登校児」と後ろ指をさされただけかもしれません。
しかし自分の突出した部分を伸ばしやりたいことに没頭する中で、欠点を補うことに特化した学校教育とは異なる道で将来の道を切り開いている方々です。
異能発掘プロジェクトROCKETのプログラム

それでは実際にどのようなプログラムが実施されているのでしょうか。
ROCKETは特定の子どもたちをスカラーという形で育成するだけでなく、誰でも参加できる公開プログラムを用意しています。
過去実施されたプログラムの中からいくつかピックアップしてみました。
※いずれもすでに開催されたプログラムのため現在は応募できません。
ROCKETプログラム1:氷で火を起こせ!
開催地:北海道帯広市
日程: | 2020.02.17-02.19 |
対象: | 小学3年生以上で数学や物理が好きな人、マイナス20度での活動に耐えれる人、8名程度 |
費用: | 宿泊費・食費として、20,000円程度 ※自宅から現地までの往復交通費が別途発生します。 |
凍てつく寒さの日には湖が凍り、屋根にはつららができる。そんな寒い日にしか出会うことができない氷を使って、君は火を起こすことができるだろうか!?
氷を使って火を起こすことができたら、極寒の地で命を繋ぐことができる。サバイブするということは、知恵をひねり出して、身近にあるものからアイディアを必死に試すことかもしれない。氷と火、対極にある二つを繋げることができたら、君は生き残ることができる。さぁ、寒空の下でサバイブしよう!

化学専攻だったわたし的にはめちゃくちゃ心惹かれます!
どのように氷で火を起こすんですかね。
単純に思いつくのは虫眼鏡みたいに光を収束させるですそんな簡単にいくのか…
極寒の地で、私は生き残ることができるのか!?
ROCKETプログラム2:沼にひそむ昆虫の正体をあばく!
開催地:群馬県館林市
日程: | 2019.09.13 |
対象: | 昆虫採集に毎日出かけるほどの虫好き、10名ほど |
費用: | 館林市までの往復交通費 |
沼の川面に飛び交うトンボ。これらの水生昆虫は沼のどこで生まれ、どのように成虫に返信していくのだろうか。世界には5,000種、日本200種ほどいるというトンボだけれど、館林の沼にはどんなトンボが潜んでいるのだろう。沼をくまなく見ていくと、トンボに限らず、新たな水生昆虫たちが発見されるかも!?
水生昆虫のエキスパートになれるか!?
未来の科学者に必要なのは採集方法、記録方法、観察方法。君にはそれらがどれほど備わっているかな?沼にいる生きものたちを見つけながら、昆虫のエキスパートの技を伝授してもらおう。そして、君自身の採集方法、記録方法、観察方法をアップさせよう!
昆虫採集に毎日出かけるほど虫好きな子っていますよね、マジで。
私は生き物苦手なので対象外ですが、生き物好きにはたまらなそうです。
教会に高校1年生の友人Kくんがいますけれど、Kくんはマジでいろんな生き物飼ってます。
蛇、ウーパールーパー、グッピーなどなど。
Kくんならドハマりしそうですね。
ROCKETプログラム3:50年前の暮らしを描く
開催地:宮城県石巻市
日程: | 2019.04.15-04.19 |
対象: | 社会科学に関心のある小学3年生以上の子ども数名 |
費用: | 宿泊費・食費・プログラム体験費として、 小・中学生57,000円程度 / 高校生 63,000円程度 ※自宅から仙台駅までの往復交通費が別途発生します。 |
かつて陸の孤島と呼ばれた美しい漁師町がある。
50年前、その町はその異名を忘れ去られるほどに賑わっていた。そこには、学校、役場、電気屋、食料品店、床屋など、暮らしにまつわるあらゆる機能があったという。その面影は今はなく、人は町から離れ、過疎化が進む。当時の様子を語れる人も多くはない。人はなぜこの豊かな海の土地を離れていくのか。この町を歩き、町の人の話に耳を傾け、かつての繁栄を描く。
忘れもしない2011年3月11日。この町を津波が襲った。時に恵みをもたらす海が脅威に変わった。猛威を振るう津波がこの町をどれほどまでに変えたのか。高波が無残に飲み込んだ大地に立ち、奪われたものへも思い巡らす。
科学プログラムだけではなく、文化人類学的な講座もありました。
人はなぜこの豊かな海の土地を離れていくのか。
都市部への一極集中や地方創生に目が向きそうな内容です。
また震災を経験した石巻市へ訪問ですから、自然の驚異や人のいのちについても学ぶかもしれませんね。
ROCKETプログラム4:服を解剖する!服から意図へ分解できるか
開催地:東京都渋谷区
日程: | 2020.02.10. |
対象: | 渋谷区在住の小学4年生から中学3年生まで |
費用: | 無料 |
何気なく着ている服。毎日来ている服なのに、デザインや着心地、繊維の種類や動きやすさなど、服が発する情報にアクセスせずに着流してはいないかな!?
服を解剖してみると、今まで気づかなかった服の裏側がみえてくる。服を着るというこだわりに目覚めてしまうほど、服を徹底解剖してみよう!
科学系だけでなく、裁縫など文科系への講座もありました。
裁縫好きな小中学生でも、服を分解したことはないでしょう。

家でやったら普通怒られそうですけどね笑
男の子だったら参加したあと機械を分解する事にはまりそうですね!
しかし分解する事はその対象の構造をより深く理解する事につながります。
より深く、普通の人が見るのとは違った視点を得られそうです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
お子さんが適しているかどうかと「型にはめず」、まずはプログラムについて紹介してみてはいかがでしょうか。
もしかしたら、子どもが興味をもって参加してみたいと言ったその日が、その子にとって人生を変える最初の一歩になるかもしれません。
今回はプロジェクトベースドラーニング型学習を取り入れている異能発掘プロジェクトROCKETのご紹介でした!
God bless you!
関連記事紹介
日本は教育後進国であるとすら言われますが、現代の教育システムのルーツや抱える問題について考えてみました。
アメリカでも教育改革が行われています。
時代の変化に伴う教育の変化を目指し、プロジェクトベースドラーニングを取り入れた高校の事例です。
日本でも教育改革がなされており、プロジェクトベースドラーニングを取り入れた学校があります。
1つはドワンゴと角川が共同設立したN高等学校。もう1つはホリエモンこと堀江貴文さんが立ち上げたゼロ高等学院です。
世界7大教育の1つであるレッジョ・エミリア教育もプロジェクトベースドラーニングを取り入れています。
子供の社会性、権利、時間という3つのポイントを重要視して、徹底した子ども視点での教育を目指した事例です。