「ルツ記」をひと言で説明すると、
神の恵みによって与えられる安息と贖いの書。
ルツ記のアウトライン
ルツ記は短い書簡ですが以下のようなアウトラインに区切ることができます。
- モアブへの寄留(1章1~5節)
- ベツレヘムへの帰還(1章6~22節)
- ルツの落ち穂拾い(2章)
- 買い戻しの提案(3章)
- ボアズによる買い戻し(4章1~12節)
- ダビデの家系(4章13~22節)
ナオミは夫と2人の息子を亡くした。嫁であるルツも義父、夫、また義理の弟も失った。
当時、男性を失い女性だけで生きるのはどれだけ過酷だったことか、ナオミが自分をマラ( “苦しむ” の意)と呼んだことから伺い知れる。
しかし、絶望の淵にいたナオミとルツは、主の恵みによってボアズの元に導かれる。そして主のあわれみ深い心を理解していたボアズによって日毎の生きる糧と安息を得た。それはイスラエル最良の王の家系に、さらにはメシヤの家系に名を連ねる贖いであった。
これは主を信じた3人の信仰者の物語。
ルツ記の著者・背景
ルツ記が書かれた当時の状況や、その背景についてまとめました。
ルツ記の著者(Who)
- 一般的には不明。
- ユダヤ人の伝承ではサムエルである。
- 巻末にダビデの系図が記載されていることから、ダビデの治世以前のものではないことがわかる。
ルツ記の時期(When)
以下の聖句より士師たちが活躍していた時代であることがわかります。
さばきつかさが治めていたころ、この地に飢饉が起こった。
ルツ 1:1
ルツ記の書名(Title)
- 本書の主人公ルツから。
- 女性の名前が書簡名になっているのはルツ記とエステル記のみ。
ルツ記から学んだこと
この3人の信仰者の物語から、現代を生きる私たちに適用できることについて考えてみます。
そして信仰者の背後に居られる主こそ目を留めましょう。
神に将来を委ねたルツとナオミ
モアブ人のルツがユダヤの地へ行ったとしても、常識的には再婚相手はまず見つからない。
ナオミも年齢を重ねたので夫は持てない。そして子も産めない。
つまり、新しい養い手も財産の築き手も見つかっていない状態。
そしてナオミが死んだら、モアブ人のルツのみが残される。
ルツにとって、自分の将来を第一に考えるなら、モアブの地に帰って新しい夫を見つける方が将来は明るい。
しかし、ルツはイスラエルの神を自分の神としたので、ナオミとイスラエルの地へ向かった。
ルツは言った。「お母様を捨て、別れて帰るように、仕向けないでください。お母様が行かれるところに私も行き、住まれるところに私も住みます。あなたの民は私の民、あなたの神は私の神です。」
ルツ 1:16
ナオミはルツのこの信仰の告白を聞き、ルツの同行を受け入れた。
モアブ人の嫁を連れて帰ることはナオミにとって決して自慢できることではなかった。
しかしこの信仰は主から与えられたものであり、主がルツを同行させていると受け入れた。
主への信仰から行動したボアズ
ボアズはナオミの親類であることからも、ルツの噂が耳に入った。
ナオミに付いてベツレヘムまで来たその信仰や、刈り入れをする人たちから勤勉な姿勢も聞いた。
ボアズは答えた。「あなたの夫が亡くなってから、あなたが姑にしたこと、それに自分の父母や生まれ故郷を離れて、これまで知らなかった民のところに来たことについて、私は詳しく話を聞いています。主があなたのしたことに報いてくださるように。あなたがその翼の下に身を避けようとして来たイスラエルの神、主から、豊かな報いがあるように。」
ルツ 2:11,12
ボアズはこのようなルツの主への信仰を見て心動かされた。
主はこのような信仰者を報いてくださる方であることを知っていた。
だからその主の働きに、主が施される恵みが自分を通して成し遂げられるようにと願い、ルツに異例の待遇を取り計らった。
主を信頼する者に豊かに報いてくださる主
ルツとナオミを買い戻すことは簡単ではないということが「買い戻しの権利のある親類」とのやり取りから分かる。
ボアズがモアブ人のルツとナオミについて言及すると、彼は慌てて買い戻しを断った。
ボアズの買い戻し(=ルツとの結婚)の動機は、主への信仰だった。
死んだ人の名を相続地に存続させるために、私は、マフロンの妻であったモアブの女ルツも買って、私の妻としました。死んだ人の名を、その身内の者たちの間から、またその町の門から絶えさせないためです。
ルツ 4:9,10
主が死んだ者にも恵みを惜しまない方であり、その御心に従った時には主からの祝福があると信じて、ボアズは買い戻しを決心した。
主の恵みを信じて買い戻しを願った信仰者。それを信じて買い戻しに踏み切った信仰者。
どちらも主への信仰のゆえにこの結婚に踏み出している。
こうしてルツとナオミは買い戻された者として、ボアズは買い戻す者としての祝福を受けた。
不安を感じつつも将来を主に委ねる幸い
ナオミは、ルツを連れて行かない方が楽だった。
ルツは、軽蔑される異国の地ではなく故郷に帰る方が将来性があった。
ボアズは、買い戻さない方が平穏な生活が約束されていた。
しかし、みな主を信じて行動を起こした。
『主に委ねる』とは受動的になることではなく、能動的に主の御心を行おうとすること。
主の御心がこの地上において実現されること、主のご栄光が表されると信じて行動すること。
このように歩む人生の中で、想像もしなかった、人知を遥かに超えた神の祝福が与えられる!
ルツは大胆な女性と思っていたけど、純粋でとっても魅力的な信仰者であることがわかった!
※ 聖書のみことばは「聖書 新改訳2017」から引用しています
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